ご利用にあたって

ご利用にあたって

外国語学習の過程で学習者は日々知らない単語に遭遇します。例えば、「有名な温泉にゆっくり浸かる」という文に出会ってその意味が分からなかったとしましょう。そのような時、「有名な」「温泉」「ゆっくり」「浸かる」という単語の意味を辞書で調べ、それらを組み合わせて考えれば、文全体の意味がおおよそ理解できるでしょう。しかし、「~なければならない」「~なくてはならない」「~だけあって~」「~だけに~」のように実質的な意味の希薄な語からなる表現の場合、それぞれの表現を構成する個々の単語の意味を辞書で調べ、組み合わせてみても、その表現全体がどのような意味や機能を持ち、どのような文脈で使用されるかを理解することはできません 。このような表現は日本語教育の世界で「文型」と呼ばれているものです。日本国内で日本語を学ぶ者であれば、文型の意味や使い方を調べるための辞書や参考書が手に入りやすいですが、残念ながら、これらの参考資料は海外で入手しにくく,世界の多くの日本語学習者の手に届いていないのが現状です。また、多くが紙媒体であるため、様々な文型を含む豊富な用例を耳で聞いて、アクセントやイントネーションを学習するのには使えません。日本語学習教材が手に入りにくく、日本語母語話者の教師が少ない海外の教育現場では,以上のような事情から文型の学習や教育は大きな困難を抱えています。
この問題を解決すべく、国立国語研究所の第3期中期計画(2016年4月~2022年3月の6年間)で実施する共同研究プロジェクト「日本語学習者のコミュニケーションの多角的解明」(リーダー:石黒圭)では、サブプロジェクト 「日本語学習のためのリソース開発」(リーダー:プラシャント・パルデシ)の「基本動詞ハンドブック」作成グループにおいて、「日本語文型バンク」を開発・無償公開することにしました。この開発は、同研究所の共同研究プロジェクト「統語・意味解析コーパスの開発と言語研究」(リーダー:プラシャント・パルデシ)の支援も受けています。

基本動詞ハンドブック